『満を持して登場的』２０２４選手権総評
２０２４年８月２５日発表
京都国際の初優勝で幕を閉じた訳だが、監督の小牧憲継は既に優勝を経験している小針（作新学院）や須江（仙台育英）と同期の４１歳のようだが、やはり４０歳前後の最後の昭和生まれの監督達はまだまだ体も元気だし、考え方も頑固ではなく柔軟さがあるのだろうし、経験もそれなりに積んでいるし、脂が乗り切ってベストの年齢なのかもしれんね。
（１）朝夕２部制を初日から３日目まで導入
３日目まで２部制をやった実際のチームの感想としては、「始まる時間が決まっているので調整しやすい」「夜は涼しいのでやりやすい」と概ね好評だったようだ。
とは言え、１日４試合の日でやったとすると４試合目終了は夜の１０時を確実に超えてしまいそうだし（インタビュー等合わせると終了は０時近く）、次回大会から即採用とは中々いかないだろう。
そこで７イニング制とか甲子園とは別の球場でとかの話も出ているようだが、とある記事で読んだがインタビュー数は少ないけど「どれが譲れないかと言えば甲子園での開催」と言うのが全員の監督の意見だったようで、やるなら１試合７イニング制若しくはコールドゲームの採用という事に現状なってしまうのだろう。
工事中は甲子園使えないので中々賛同は得られないかもしれないが、前からクラウドファンディングを利用して甲子園をドームにすればと言っているけど、この狂ったような糞酷暑はこれからもっと酷くなっていく可能性が高いので、甲子園のこの先の１００年に向けて何かしらの思い切った改革が必要なのは言うまでもない事。
上記の案以上の斬新な改革案を若くて柔軟な頭の持ち主たちが出してほしいと願う。
（２）左投手に不利なスピードガン設定
藤田（東海大相模）は本来１４９`がMAXという事だが甲子園のガンはMAX１４７`（スカウトのガンでは１４９`）と表示されたのはまだましな方かもしれない（藤田もアドレナリン出まくっただろうし）。これに対して同じく１４９`を地方大会で投げていた中井（中京大中京）と田崎（興南）は１４３`と表示されたが、この二人は調子落ちだった事もあるだろうが、中崎（京都国際）は１３６`表示止まり。この３名は腕の位置がかなり低い投げ方。
これは勝手な憶測なので違うかもしれんが左腕に関しては上から投げ下ろすタイプの方が甲子園のガンは正確な数値に近い表示が出やすいのかも？
いずれにしても、右腕の投手にはやや甘めの数値が出て左腕の投手には厳しめの数値が出ると言うのは周知の事実なのだから、甲子園での数字は歴史に残って行くものなので不平等はもう解消してほしいものだと強く思う。
（３）低反発バットの導入によって技巧派投手が増えた？＆ＨＲが少ない
まあ何だろう、体全体の割に太腿が異常に太く１４０`ちょっとくらいのストレートで変化球が縦スラしかない特徴に乏しい投手も未だに多いけど、今大会は霞ヶ浦の球が遅くコントロールで勝負するタイプや、小松大谷の球を長く持ったりクイックしたりと打者のタイミングを外して勝ち上がった投手もいた。
そういった投手達は略体が細すぎてスピードが出ないだけで、今後徐々に体つくりも少しずつ行っていけばストレートも簡単に１０`くらいは速くなる。
低反発バットでは低めの変化球を投げたり、スピードの遅い変化球を投げておけば長打は無いと言うデータは出ているのだろうけど、それだけに頼った投球では将来性がなくなる。
高校生の可能性は無限なのだから、通常は変化球投手だけどここ一番では１５０`くらい投げれる投手を目指してストレートを磨いていってほしいもんだと強く願う。
後は２段モーション解禁によって伸びた投手も多かったようだが（代表例は藤田（東海大相模））、この投法によって打者がタイミングを合わせにくくなった部分も長打が少なくなった要因なのだろう。
打者に関しては、今までは掠っても飛ぶ金属バットをブリブリ振り回して芯を外しても強い打球を量産していたが、芯を外すと飛ばないバットでは腐るほど言ってるけど技術が大事となる。
２０２４年は打撃技術改革元年だったと将来呼ばれるようになる事を願う。
（４）ぱっと見バント練習してねえだろ？と思われる選手に無理くりバントさせて失敗して敗退したケースも散見
智辯和歌山のケースが顕著だったが、練習でちゃんとバント練習させてないだろうと思われるしかも打てそうな打者に無理くりバントさせて当然失敗し敗退していった。
前から北海道の指導者たちに苦言を呈してきたが、野球は確率のゲームなのだから、打てる確率が３割あってバント決めれる確率は限りなく低いのであれば当然打たせるべきだし、打たせて良い当たりのゲッツー食らってもそれはやむ無しと腹くくれないと今後も同じ失敗を繰り返して敗退していくこととなるのだろう。
また普通の送りバント失敗も例年以上に多かった印象。
低反発バットの影響で打球が転がらなくと言うのではなく、単純にファールになったりが多かった印象だが、全員がバンバン打てるチームなどは無いわけで、バントは最低限真面目に練習しとかないと勝ち上がれないのは今に始まった事ではない。
（５）評判の投手が負傷＆故障からベンチ外となったり、不調から少ししか投げれなかったり、投げるチャンス無く敗退したり
開幕前は投手に関してはギリ例年くらいの実力のある投手がいると思ったが、廣永（熊本工）が負傷からベンチ外となり、平嶋（大阪桐蔭）や小松（花咲東）は予選でもちょっとしか投げていないので不調なんだろうとは想像していたが想像通りの結果だった。
中西（智辯和歌山）は投げれるチャンスがなかったわけではないけど未登板のまま敗退。
更に評判の左腕だった中井（中京大中京）や田崎（興南）が調子落ちと言う状況。
その代わり、有馬（聖カタリナ）が投げる試合ごとに成長し評価を上げたであろう部分と、井黒（北陸）はスピードもまだまだ出るだろうし意外に変化球も良かった部分が救いか。
（６）誤審
特に多いのが１塁に走り込んだ＆ヘッドスライディングした際のセーフ＆アウトの判定。また勝負所でのストライク判定。９回の内例えば３回までリクエストを認めるとかしないと、妄信的なヤバイ奴もいるので審判の家を特定して晒すとか更に恐ろしい事件に発展することも想定される。ストライク判定も高校野球の投手ってマダックスするのも偶にいるけど平均すると１４０球くらい投げるのだろうから、炎天下の中中腰に両投手合わせて３００球弱を全球正しく判定するのは不可能。
誤審で叩かれまくっては、酷暑の中手弁当で審判をする人も増える要素がないわけで、審判を守る意味でもリクエストの導入は急務だと思う。
ただあまりにも酷い誤審を連発するような人は技術向上の訓練に強制参加等も行うべきと思う。
（７）守備に関する部分
正直この糞酷暑の中エラーの１つや２つは出るのは仕方がないと割り切るしかないのでは？と大会序盤は思っていたが、関東一や京都国際の守備を見るとやっぱ普段からの練習如何でこの酷暑の中でも一試合通じての攻めの鉄壁の守りって出来るんだなあと考えを改めさせられたな。
（８）ここからは毎年恒例のベスト８以上の学校について
まずは優勝した京都国際（小牧憲継４１歳（指導者歴１６年））
ツイッターでも記載したけど、予選で一度逆転された試合は継投したが、それ以外では全部中崎と西村の２枚看板の左腕がローテーションから交互に完投勝ちして来た。で決勝はそれまで交互に先発させて来た順番を変えて中崎連続先発とした臨機応変さが結果的に良かったのだろう。試合展開をロースコアの接戦と読み、より良い投手を終盤に取っておいた小牧の読み勝ちのように思う。
巷では強打のチームとかの評価だったようだが、小牧は「特段打てるチームではない」と正当な評価もしていたようだし、絶対的に信頼している左腕の２枚看板を前面に出して、打てないなら守備はきっちりして接戦に持ち込んで勝つと言う自分たちの野球を信じて貫き通せた部分が甲子園の女神に好かれたのだろう。
サイト開設した２１年前には良く関西遠征してたが、京都にも何度もお邪魔した際に京都国際は見ていたが、大型の野手のドラフト候補はいたが、投手はそれ程良いのがいなく楽しそうに野球をやってるチームの印象だったが、最近では左腕投手がバンバンプロ入りして、野手はかなり小粒な選手ばかりになり、当時の面影はないチームに変貌したが、好左腕量産の理由は知りたいものだが。
準優勝の関東一（米澤貴光４９歳（指導者歴２４年））
２戦連続良くなかった左腕軟投派の畠中が東海大相模戦では別人のような投球と言うのもある意味高校野球の面白さ。更に準決勝では甲子園初登板の投手を先発させると言う一世一代の大博打を打ち賭けに勝った。そして春から進化した坂井と言う絶対的守護神を持っている。また細部まで鍛えられた鉄壁の守備があるにも関わらず勝てなかったのは、打てる素材は優勝した京都国際よりも遥かに多かったはずなのに機能しなかった部分。
課題は明確になったのだから、今後も素材の良いのは入部してくのだろうから、打撃技術に拘った指導を徹底すれば近い将来実を結ぶのではないか？と思う。
神村学園（小田大介４１歳（指導者歴１１年））
頼みの正林が選抜の時よりも打法が劣化し当然不振となってしまったが、その他の選手が良く頑張ってよくぞここまでと言うのが正直な感想。最近鹿児島県内のレベルが上がっている中で２年連続の甲子園ベスト４と言う成績は誇れるものだと思うし、野手では今岡弟が残って投手では早瀬も残るので来年も希望が持てるのだろう。
小田も京都国際の小牧と同じ年のようだが、刺激を受けただろうし期するものもあるだろうから来年に期待してみたい。
青森山田（兜森崇朗４５歳（指導者歴９年））
中学時代に青森県勢としては全国初優勝した面子が多くいたようだが、投手も素材の良い桜田が選抜から伸びずにエースの関の負担を軽減できなかったことが青森県勢悲願の初優勝への扉を開けられなかった要因なのだろう。また素材の良い野手達も今大会の中では一番多くいたけど、全国制覇するには甲子園の準々決勝くらいに狙って打撃のピークを持ってくる事が必須だが、この辺りを計算して勝ち進むだけの経験値が指導者に足りなかったのだろう。来年も野手は複数残るので投手次第ではチャンスはあるだろうがこの経験を生かせるか？だろう。
東海大相模（原俊介４６歳（指導者歴８年））
ツイッターでも記載したけど他校が羨む投手陣を擁しながらも３連続藤田先発の時点で甲子園の女神に「原はまだまだ経験が足りないので優勝は未だ早い」と見切られたんだろうな。剛腕の福田を使いきることなく敗退と言うのは非常に勿体ない。来年の神奈川は横浜高校が戦力充実してるし夏に戻って来れる確率は一切ないのだから。何だろう、高校野球の監督って人生を試されてるような気がする。自チームの充実した戦力を心底信頼し上手く選手たちを使いこなせないとダメだし、攻める所で攻めずに守りに入ってしまっては優勝できないし、優勝できるときに勝ち切っておかないと次のチャンスまで時間が物凄く掛かってしまう。
滋賀学園 山口達也５３歳（指導者歴２５年）
正直言葉は悪いが籤運に一番恵まれていたように思うが、ダンス応援で話題となった応援スタイルもここまで来た要因だったように思う。応援スタイルは「悪乗り」とか賛否両論はあるようだが、数年前に何かの記事で読んだのだが、女子高生が「何で野球部の応援に来させられなきゃならないんだ」と不満を漏らしていた中で報徳学園発祥と言われる「あげあげホイホイ」の応援が始まった際に「この応援は好き」とノリノリで応援したらしいが、確か筆者が「野球人口が減っている中でこのような応援から野球に興味を持ってもらえる人を増やしていくのも悪くない」みたいな感想を記していたと記憶しているが、その意味でもダンス応援の今後の進化に期待したい。
智弁学園（小坂将商４７歳（指導者歴１８年））
奈良県内でも今年は珍しく評価があまり高くは無く、折角去年甲子園で登板させて経験を積ませた青山・田中が伸びずに打線も去年活躍した知花が伸びなかった。ここからはツイッターでも記載したが、その代わり田近が右打者にも左打者にも３種類のチェンジアップで勝負できる稀有な左腕に進化し、打線も捕手としては微妙も打撃は良い山崎や甲子園ではそれ程数字は残せなかったが素材は抜群な中道がいてのここまでの道のりだったと思う。監督の小坂も今年の面子で優勝までは考えられなかっただろうし、頼みの田近もそろそろ疲労がピークだっただろうから、あわよくばを狙っての予選でも投げていない１年の杉本をしれっと先発させて貴重な経験を積ませた手腕は流石と褒めざるを得ない。
大社（石飛文太４２歳（指導者歴５年））
正直ベスト８まで勝ち上がると予想できたのは、関係者と島根県民以外はいなかったはず。ただまあ平日でもアルプススタンドが埋まる大応援団の声援に背中を押されてエースの馬庭の事前の想像以上の快投に次ぐ快投によってよくぞここまで。打線でもプロ志望届け出すと明言した藤原は足が抜群に速いだけではなく打撃センスもある珍しいタイプだが、打撃は足が攣ってから微妙ではあったものの足では魅せたし、その他の選手も自分の出来ることをやりつくしたからこそなのだろう。全国の公立高校は見習うべき点は多かったんだろうと思う。但し投球数制限制度はあるので、公立校とは言え信頼できる投手は２枚は必須の時代なので次回はね。
（９）Ｕ１８の選手選考に異議あり
毎年根拠のないメンバー選考となるのは何でなんだろう？特に今年は夏の甲子園出場者しかいないと言うのは何を考えているんだろう？しかも物凄く甲子園で活躍したわけではない選手も多数選出されてる・・・
前から言っているが、Ｕ１８侍ジャパンと言うのは日本代表であり、予選で敗退した中にも甲子園組を凌駕する素材が物凄く多くいるんだから、ちゃんと予選も見てるのか？と問いたい。
こういった点では西谷（大阪桐蔭）はちゃんと予選を見て全国から選出していたが、西谷以外は何故それが出来ないのか？
（９）最後に、ドラフト指名の観点で言えば指名確実となったのは以下なんだろう。
右腕：今朝丸（報徳学園）有馬（聖カタリナ）坂井（関東一） →関（青森山田）井黒（北陸）は大学進学との事
左腕：藤田（東海大相模）中崎（京都国際）
野手：箱山（健大高崎）石塚（花咲徳栄）宇野（早稲田実）藤本（京都国際）中村（宮崎商）
こうしてみると、開幕前から比べると人数的にはかなり寂しい感じとなってしまったな・・・・
で、開幕前に２年生投手はかなり揃った印象と記載したが、皆きちんと爪痕は残せたのではないだろうか？
右腕：吉田（金足農）石垣（健大高崎）川端（木更津総合）福田（東海大相模）宮内（中京大中京）森・中野（大阪桐蔭）堀田（広陵）
左腕：市村（霞ヶ浦）下重（健大高崎）中村（早稲田実）西村（京都国際）
上記の他では未出場組の右腕では小川（日大三島）新井（滝川）横山（明石商）松延（鳥栖工）陣内（長崎海星）藤川（延岡学園）など
未出場組の左腕では鈴木（東海大甲府）芹澤（高蔵寺）宇佐美（西条）など
この時点でここまで名前がスラスラ挙がる年は珍しいのではないか？と思うので、来年は高校生投手の豊作年なのだろう。更に春から夏にかけて一気に評価が上がる投手が最近特に多いのでまだまだプラスされて行きそうだし。
その反面、この時点で野手では名前が挙がってる選手はかなり少ないのが不安だが、秋季大会で注目されるのが複数出てきてほしいと願う。
チームとしては、来年の全国の勢力分布の絶対的中心に据わりそうな学校は今の所見当たらないので（好投手が複数残るのは健大高崎と大阪桐蔭だが打線が全くの未知数）、今年同様に混戦模様となるのだろう。